小田部のフジ

 

 福岡教会のフジは、黒田藩の家臣小田部為雄(幼名・龍右衛門)が、親友平野二郎国臣(黒田藩の勤王の志士)の死を悼んで、自分の屋敷(現福岡教会はその一部)に植えたのが始まりとされています。黒田藩の紋所が「藤巴」であったことから、藩主黒田公が大変お気に召され、「御藤所」として小田部が「御藤番」を勤めた由緒あるフジです。

 

「立ち寄りて見てもゆかなむわが宿の、

    軒端にかかるはなの藤波」(為雄)

 

の歌のように、当時フジの季節になると黒田藩の家紋の入った門が開けられ一般にも開放され、見事な花を楽しむことができ、最盛期には56株、2000坪(6,600㎡)に及んだと言われています。

 一方、この藤園のフジは種類も多く、早咲きの白(山藤)に始まり紅、薄紫、濃い紫、そして最後の遅咲きの白藤まで花期は一カ月にも及び、明治、大正、昭和(戦前)を通じ福博随一のフジの名所として、国鉄の「旅のニュース」や新聞に、開花状況を知らせる「藤便り」が載せられていました。そして、バンコ(木や竹の長椅子)に緋毛氈を敷いた茶店もでき、藤見会や琴の演奏会、茶会、句会、詩吟大会などで大いに賑わった由です。

 

 

・・小田部のフジによせて(1)・・・右巻き、左巻き

 

「左巻き」と言う言葉があります。広辞苑によると「時計の針と反対のまわりかたで巻くこと」、「(つむじが左巻きの人は正常でないという俗説から)頭の働きが少しおかしいことあるいは人」とあります。この言葉は、つむじが左巻の人が少ないと言ったことから出たとも言われています。では植物では? 

日本の植物学の草分けとして有名な、貝原益軒は1709年「大和本草」と言う本を書きましたが、「ツルクサ」はすべて左巻であるとしています。しかし実はこれは間違い。植物には、アケビやアサガオ、キウイフルーツ等の右巻きの植物、スイカズラ、ヘクソカズラやツルリンドウなど左巻きのものもあります。そして同じ植物でもヤマフジ、ナツフジは左巻き、ノダフジは右巻と左右両方の植物もあります。

では右巻き、左巻きはどういう巻き方を言うのでしょうか?これまた昔から日本でも外国でも色々議論のあるところで、その定義は図鑑や教科書によって違っています。しかし現在では日本植物学会(1956)、日本植物生理学会(2007)で決められた、蔓の伸びる方向を根元から見て時計回りに巻きながら成長していくのを「右巻き」、反時計回りを「左巻き」と考えるのが一般化しています。

では蔓はなぜ巻き付くのでしょうか? これは長いあいだ疑問でしたが、最近の研究の結果、蔓が触れた外側の細胞が右や左に傾いて伸びるためと言うことが分かってきました。

右巻き、左巻きはそれぞれの植物の固有なもので、遺伝的に決まっており南半球、北半球などの生育場所や色々な生育条件によっても変わりません。

ではなぜ右巻き、左巻きが遺伝的に決まっているのか。その仕組みは全く分っていません。最近遺伝子操作の技術が発展し花や野菜の新しい品種も作り出されていますが、これら遺伝子工学の研究や技術の発展によってその仕組みが解き明かされる日も遠い未来ではないでしょう。たったこれだけのことでも自然は分らないことが多く、その不思議さは驚くばかりです。

さて、福岡教会のフジはどうでしょうか?福岡教会には3種類のフジがあります。

正面入り口を入って右側にあるのはヤマフジ(濃い紫色)、左側には2種類の花色の違ったノダフジがあります。

 

堅いつぼみの中ではとっくに花芽は出来ていて、じっと寒さをしのぎながら春の開花の準備を着々と進めています。花が咲いたら美しい花を愛でながら、どうぞ改めて蔓がどちらに巻いているか、右巻きか左巻きかしっかり確かめて下さいますよう。